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川村正樹,徳永隆治 & 岡田 真人

日本物理学会 第56回秋季大会, Vol.56, Issue 2, Part 2, pp.240

非単調系列連想記憶モデルのカオス現象の解析

記憶パターン数 pが素子数Nと同じオーダーである時(p=αN, α〜 O(1))、連 想記憶モデルはフラストレーションを持つ。本研究では、非単調な出力関数を持 つ系列連想記憶モデルを取り上げ、経路積分法[1]により熱力学的極限(N→∞)に おける巨視的状態方程式を厳密に求めた[2]。その結果、系にフラストレーショ ンが存在する場合(α≠0)のみ、想起過程においてカオスが出現することがわかっ た。カオスが出現するには、素子の非単調性が重要であるが、記憶パターン数が 有限(α=0)の時にはカオスは出現しない。また、素子数Nが有限の場合もカオス は出現せず、N→∞の熱力学的極限でカオスが出現する。重要な点はα→0でも カオスが出現し、α=0のときと全く異なる様相を呈していることである。

導出した巨視的状態方程式より、絶対零度T=0のときの想起過程の解析を行っ た(左図)。×印は定常状態方程式から求めた3つの不動点Q,P',Pである。直線 m=0上のQはサドルノード(方向反転)、P'はリペラ(不安定ノード)であり、Pはリ ペラ(不安定フォーカス)である。リペラPの周辺には準周期アトラクタが発生し ている。

次に、不変集合の発生や相互関係を(θ,α)に関する2係数空間で調べた(右図 )。θは非単調性を表すパラメータである。m=0は巨視的状態方程式の不変集合と なっており、θの減少に伴い1周期アトラクタQが$2$周期アトラクタQ_2へ変化す る。さらに、引き続く周期倍分岐でカオスへと推移する。領域AおよびA'では1周 期アトラクタQのみがある。領域B'ではQと直線m=1周辺の2周期アトラクタP_2が 共存する。領域CおよびDでは、不変直線上の2周期アトラクタQ_2が観測できる。 他方、領域Cのみにおいて、m=1周辺で準周期あるいはカオス的アトラクタが観測 され、領域Dでは初期条件によらずにQ_2だけが観測される。

上記の共存現象は、各領域の境界で生じる固有の分岐現象によって形成され ている。境界A→BではサドルノードP'と1周期アトラクタPがサドルノード分岐で 発生する。同様に、境界A'→B'では2周期のものがサドルノード分岐で発生する。 また、境界B→Cでは、1周期アトラクタPがホップ分岐でリペラに変化し、その周 辺に準周期アトラクタが発生する。リペラPは境界C→Dに近づくにつれてスナッ プバックリペラへ変化し、同時に準周期アトラクタはカオス的アトラクタへ推移 する。最後に、カオス的アトラクタは境界C→DにおいてPが形成するベイシン境 界に接触し、クライシスによって消滅する。

  1. Kawamura and Okada, preprint.
    川村 & 岡田, 信学論, J84-D-II, 10 (2001)
  2. 川村 & 岡田, 日本物理学会 第56回年会 (2001)

M. Kawamura, R. Tokunaga, & M. Okada

Meeting Abstracts of the Physical Society of Japan, Vol. 56, Issue 2, Part 2, pp.240, 2001-09

Analysis of chaotic dynamics for non-monotonic sequential associative memory


kawamura@ic.sci.yamaguchi-u.ac.jp
Last modified: Wed Mar 27 17:41:37 JST 2002