連想記憶モデル HASPは、 Hirai(1983)によって提案された連想記憶モデルである。 HASPは相互想起型連想記憶回路と相互抑制回路、読み出し回路から構成される。 HASPの特性としては、従来のモデルでは困難であった多重マッチの解消や複数の キー項目に連合した項目の積集合や和集合などを検索できることが挙げられる。
これまでに、HASPの特性を利用して、足し算過程やプライミング効果などの 記憶に関する認知心理学的現象が説明されている。 また、川村と平井(1995) はHASPの二つの回 路を別々に議論することによって、クロストークノイズを評価し、絶対容量の 解析を行った。
川村, 岡田, 平井(1998)は1対多の連合 を行った場合の想起過程を議論した。1対多の連合とは、1つのキー項目に対し て、複数の連合項目を対応付けて記憶することを指す。この場合、キー項目を 入力すると対応する複数の連合項目の重なりに相当する混合パターンが出力さ れる。従って、記憶した1つの連合項目を想起するためには、混合パターンの 対称性を破る外部入力が必要である。外部入力は文脈情報に相当すると考えら れる。
今回は外部入力として、記憶した連合項目にノイズを付加したパターンを 与え、連合項目を想起するために、どれくらい連合項目と似ている外部入力を 入れれば想起できるかを統計神経力学を 用いて定量的に議論した。