川村正樹 & 岡田 真人

日本物理学会 第59回秋季大会, Vol.59, Issue 2, Part 2, pp.210

階層パターンを記憶した連想記憶モデルの相関ノイズによる状態遷移

シンファイアチェーンおよび同期発火のメカニズムを調べるために,様々な議論 が行われている.一方で,同期発火の機能的な役割を調べることの重要性が指摘さ れている.青木と青柳は自己想起と相互想起のシナプス結合を持つ連想記憶モデル を取り上げ,熱揺らぎではなく,同期スパイクを入力することによって,状態遷移 が起きることを示した.

本研究では,同期発火の機能的な役割を調べるために,連想記憶モデルに熱揺らぎ に相当する独立なノイズ$\zeta_i^t$と,同期発火に対応する相関ノイズ $\eta^t$を導入する.これより,熱揺らぎによる効果と相関ノイズによる効果を検 討することができる.

x_i^{t+1} = sgn(Σ_{j≠i}^N J_{ij} x_j^t+ζ_i^t+η^t)
ζ^t_i 〜 N(0, Δ^2), η^t 〜 N(0, δ^2)
本モデルでは,相関ノイズを導入したので,各ニューロンの発火に相関を生じる. 従って,素子数無限の極限でも熱力学的極限が存在せずにサンプル依存性が現れる. このような場合には,系の巨視的状態は確率密度関数で記述される.

相関ノイズの役割を調べるために,記憶パターンや混合状態への状態遷移を議論す る.一般に,温度を上げると混合状態は不安定化し,熱揺らぎによって遷移させる ことはできない.そこで,相関ノイズにより,状態遷移が可能であるかを検討した. その結果,相関ノイズの場合は記憶パターンから混合状態への遷移が可能であるこ とがわかった.これは相関ノイズが系の構造を壊すことなく,状態遷移を行わせる ことが可能であることを示している.これらの結果より,同期スパイクは相関ノイ ズと同じ効果を持っていると考えられる.


M. Kawamura, & M. Okada

Meeting Abstracts of the Physical Society of Japan, Vol. 59, Issue 2, Part 2, pp.210, 2004-09

State transition by correlated noise in an associative memory model storing hierarchically correlated patterns


kawamura@is.sci.yamaguchi-u.ac.jp
Last modified: Wed Jun 8 14:11:11 JST 2005