我々はフラストレーションによってカオスが生じることを非単調系列想起型連想記 憶モデルを用いて示してきた [1,2]。本モデルの巨視的状態方程式は、経路積分法に よって有限温度を含む場合について求められている。しかしながら、発生するカオ スが温度効果によるものではなく、フラストレーションによるものであることを示 すために、絶対零度(T=0)の場合について解析を行ってきた。本発表では、フラ ストレーション誘因カオスが温度(ノイズ)によってどのように変化するかを報告す る。
有限温度(T>0)の場合、微視的な状態は確率的に遷移する。しかしながら、この 場合においても、巨視的状態方程式は決定論的になり系のダイナミックスを厳密に 解析することができる。温度を上げると、写像の傾きが緩やかになるため、カオス が発生しにくくなると考えられる。一方、Fukai & Shiinoはデール則を用いたネッ トワークにおいて、温度効果によるカオスの発生を報告している [3]。従って、カ オスの発生には温度も重要な要因の1つであると考えられる。
本モデルにおいても、温度によって分岐の構造が変化する可能性がある。そこで、 有限温度の場合における2係数分岐図を構成した。図1は不変直線 m=0上のアトラ クタに関する分岐図である。その結果、絶対零度のときには現れなかった分岐が見 られ、温度を上げることによって、構造が変化していくことがわかった。一方、 m≒1のアトラクタに関する分岐図には大きな変化は見られなかった。